全学副専攻「数理・データサイエンス教育プログラム」(以下副専攻)は、千葉大学の全学副専攻のひとつです。この副専攻には5つの教育プログラムがあります。いずれもデータサイエンスの基礎となる数学・統計学、プログラミングの基本的な知識とスキルを身につけると同時に、それらをさまざまな分野の問題に適用するための実践力を養うことを目的にしています。
データサイエンス(以下DS)はデータから意味のある情報を抜き出し、そこから洞察や深い理解を得ることを目的にする学際的分野の名称です。DSを実践するためにはデータに潜む関連や法則を発見し、それを活用するための知識とスキルが必要です。DSの定義として有名なコンウェイのベン図 [1] では、DSは「数学・統計学の知識」、「ハッキング」(プログラミングのスキル)、「各分野の専門知識」の3つの要素(以下3要素)から成り立ちます。
[1] http://drewconway.com/zia/2013/3/26/the-data-science-venn-diagram
副専攻の教育プログラムを修了するための必要単位数はプログラムごとに異なります。単位は「指定科目」から修得しなければなりません。指定科目には複数のプログラムで単位が認定されるものと、そうではないものがあります。普遍教育科目の「情報リテラシー」(2単位)と「データサイエンスB」(1単位)の3単位は、5つすべての教育プログラムの必修科目(以下必須単位)です。ここではこの2科目以外の単位をどの科目から修得すべきかを説明します。
各プログラムで認定される具体的な科目は、最新の「全学副専攻 数理・データサイエンス教育プログラム 手引き」で確認してください。手引きは副専攻のWebサイトで閲覧、ダウンロードできます。
DSの入門プログラムです。副専攻を履修する全員が修了しなければなりません。必須単位以外に数理・データサイエンス科目(展開)からさらに1単位、共通専門基礎科目の数学・統計学それぞれのAもしくはB1から3科目×2単位=6単位、合計10単位が必要です。このプログラムを修了したら、目指す方向に応じて下の20単位のプログラム(3種類)のいずれかを履修するのがよいでしょう。
数学・統計学を指向したプログラムです。必須単位以外に数理・データサイエンス科目(展開)からさらに1~3単位が必要です。基礎コアとは異なり、数学・統計学はそれぞれのB1とB2の6科目×2単位=12単位が必要です。2~4単位は各学部が開講するDS関連の専門教育科目から修得します。学部専門教育科目にはこのプログラムの単位に認定されない科目や、所属学部の人しか認められない科目もあるので注意しましょう。
プログラミングや機械学習をしっかり学ぶエンジニア指向のプログラムです。必須単位以外に数理・データサイエンス科目(展開)からさらに3~5単位、共通専門基礎科目の数学・統計学それぞれのAもしくはB1から3科目×2単位=6単位が必要です。4~8単位は各学部が開講するDS関連の専門教育科目から修得します。また教養展開科目(データを科学する)の「情報セキュリティ分析(入門)」、「情報セキュリティ分析(実践)」も選択できます。学部専門教育科目にはこのプログラムの単位に認定されない科目や、所属学部の人しか認められない科目もあるので注意しましょう。
アナリスト=データ分析を指向したプログラムです。このコースではさまざまな分野での分析、活用の事例を通じて社会におけるDSの意義を学びます。理工系以外の人にも比較的学びやすいコースです。必須単位以外に数理・データサイエンス科目(展開)からさらに4~6単位、共通専門基礎科目の数学・統計学それぞれのAもしくはB1から3科目×2単位=6単位が必要です。3~7単位は各学部が開講するDS関連の専門教育科目から修得します。また教養展開科目(データを科学する)の「デジタルクリエイティブ基礎」も選択できます。学部専門教育科目にはこのプログラムの単位に認定されない科目や、所属学部の人しか認められない科目もあるので注意しましょう。
3つの要素を均等に、かつ深く学ぶ教育プログラムです。必須単位以外に数理・データサイエンス科目(展開)からさらに5~8単位、共通専門基礎科目の数学・統計学それぞれのA、B1、B2から6~12単位が必要です。5~16単位は各学部が開講するDS関連の専門教育科目から修得します。また教養展開科目(データを科学する)の「情報セキュリティ分析(入門)」、「情報セキュリティ分析(実践)」、「デジタルクリエイティブ基礎」のいずれかの科目から2単位まで選択できます。学部専門教育科目には所属学部の人しか認められない科目があるので注意しましょう。
DSの3要素をバランスよく学べるよう、普遍教育の数理・データサイエンス科目(展開)と教養展開科目(データを科学する)を開講しています。ただし「データサイエンスA」、「連接概念による数の見直し」、「線形性の使用から使える本質・概念へ」は副専攻の指定科目ではありません。下の図はそれら以外の各指定科目が3要素のどれと関連が深いのかを、おおよその位置で示しています。本当は3次元にすべきですが、平面に描いているので科目の位置が正確な授業内容を表現していない場合もあります。
図の中心付近の「情報リテラシー」と「データサイエンスB」は副専攻の中核となる科目で、どの教育プログラムを履修する場合でもこれらの単位を修得する必要があります。
「情報リテラシー」(普遍教育科目、数理・データサイエンス科目(基礎))は全学必修(1年次T1-T2)科目で、コンピュータやインターネットの仕組み、情報倫理などを広く学ぶ授業で、大学生にふさわしいリテラシーを身につけます。この科目は各学部の卒業要件上の必修科目でもあります。
「データサイエンスB」は数理・データサイエンス科目(展開)のひとつです。初歩的な統計学とPythonプログラミングの学びを通じDSを体験することを目的にしています。いわばDSの入門に相当します。令和6年度以前の入学生については、全学共通の卒業要件(つまり卒業のためだけの要件)が、数理・データサイエンス科目(展開)から1科目(1単位)なので、副専攻の履修を目指さない場合は同(展開)からどれか1科目を選んで履修することで卒業要件を満たします。しかし副専攻の教育プログラムでは「データサイエンスB」が必修です。また令和7年度入学生からは約半数の学部 [2] で「データサイエンスB」が卒業要件上でも必修科目になりました。必修になった学部は曜日・時限の決まったクラスブロック指定なので履修申込(抽選)は不要です。
[2] 理学部、工学部、園芸学部、医学部、薬学部(情報・データサイエンス学部は、履修を強く推奨)
副専攻の指定科目は「情報リテラシー」と「データサイエンスB」を履修した上で、さらに専門性の高い内容を学べるように構成しています。【5つの教育プログラム】で説明したように、10単位の基礎コアは名のとおりDSの「核」に相当します。20単位の3コースはおおむねDS 3要素のいずれかを指向しています。
副専攻履修者全員が必修の基礎コアは遅くとも2年次終了時に修得できる構成になっています [3] 。一部の学部ではもっと早く修得できる場合もあります。基礎コアの修了後は20単位のいずれかのコースに進み、さらに30単位のプログラムを修得するのが副専攻の典型的な履修順序です。10単位からスタートし、3つの20単位のどれかを経由して30単位のゴールを目指す、そのように考えて作られたのが5つの教育プログラムです。
5つの教育プログラムを修了すると、プログラムごとのオープンバッジ [4] が千葉大学から授与されます。10単位と20単位のオープンバッジは要件を満たせば在学中に授与されます。30単位の数理・データサイエンス教育プログラムの修了者には卒業時に修了証書とオープンバッジが授与されます。
オープンバッジや修了証書はみなさんが真摯に学んだ事実を千葉大学が証明するものです。またオープンバッジは知識・スキルの具体的な内容を提示できます。卒業学部/研究科の学位記と同じように、副専攻の修了証書やオープンバッジはみなさんのキャリア形成に必ず役立つはずです。ひとりでも多くの人が副専攻の履修を目指してほしいと願っています。
[3] 理学部、工学部、園芸学部、医学部、薬学部、情報・データサイエンス学部以外の場合は、事前に「データサイエンスB」の履修申込(抽選)が必要です。
[4] オープンバッジの実体は世界共通の規格にしたがって作られたデジタルデータで、バッジの運営組織のサーバ上に保存されます。また電子証明書の技術を使い複製や改ざんができないように作られています。データには副専攻のプログラム名や、学修した内容を文章で表現した「メタデータ」が含まれます。例えば就職活動で相手にオープンバッジのURLをQRコードで送ったり、PDFにして渡せば、受け取った相手はあなたが在学中に学んだ知識やスキルを文章で確認できます。メタデータは日本語と英語の両方が含まれます。
参考 デジタル庁「オープンバッジについて」